「風呂に入るからあ~、布団敷いて寝ときなさいね」

母は上機嫌そうだった。鼻歌を歌いながら上着を脱いだ。母の体から、大人の男性独特の苦い体臭を感知した。

点けっぱなしになっていたテレビでニュースが流れていた。バラバラに切断された遺体が山林で発見されましたと、アナウンサーが棒読みしている。
僕は、暗い事件ばかりを目の当たりにして、気持ちが暗くなった。電気を消して布団に潜ったが、いたたまれなくてなかなか眠れなかった。

翌日、集団登校の中で僕の足取りは重かった。
学校に行きたくなかった、誰にも会いたくなかった。今日、先生に質問されても何も答えられない気がした。
僕は、少しずつ足を遅めて列の一番後ろまで下がっていった。
昨日事件があった公園の側を通った時、皆が自分を見てないのを確認して逃げ入った。集団登校の列は僕に気付かずに、ムカデのように前進していった。

公園内のねずみ色の砂利を歩いた。
誰もいない――僕はブランコに座った。6年生の身長だと足が地面にしっかりつく。