公園を囲むように生えている木と木の間から、別の集団登校群が通り過ぎて行くのが見えた。
トイレの入口にはテープがぐるぐる巻いてあり、立入禁止と書かれた板が立っていた。
木々から垂れ下がった緑色の葉っぱが、トイレの天井を鷲掴みするように覆っていた。
僕は体を揺らした。ブランコが低過ぎて漕ぐことはできないけど、ゆりかごのように揺らし続けることはできた。
目を瞑ると心地良い闇が僕を包んだ。昨日の血生臭い事件をかき消すように、樹木が新緑の香りを発散させている。
父のことを考えた。

父は僕と正反対の性格だった。
町内会では自ら会長に立候補して、皆の先頭に立って意見をまとめた。市民ソフトボール大会ではキャプテンを務め、バッターボックスに立てば遠くまで打ち、優勝した時は皆に胴上げされた。
家では優しく、気の弱い僕が失敗して泣いても、怒鳴らずに頭を撫でてくれた。

――今のうちに思いっきり泣いとけ。でも次は泣かないようにがんばろうな。

僕は、父に憧れていて父のようになりたいと思ったけど、やっぱりなれないなと感じてしょげる毎日だった。

――開けてみな。

僕が幼い頃、父が箱を渡してきた。箱は白い厚紙でできていた。