芹沢が淡々と説明した。悪びれた様子が表情に出ていない。

「……今は、あの男子に話しかけても大丈夫なの?」

僕は前から3番目の男子の背中に視線を向けた後、芹沢と目を合わせた。

「今話しかけても襲われないけど、彼は焦点の合わない視線をこっちに向けるだけでしゃべらない。静止している間にエネルギーを貯めていて9時9分に一気に爆発させざるを得ない症状らしいんだけどね」

説明し終えると芹沢が席を立った。もう、僕との会話に興味がないらしく、早足で廊下へ出ていった。

放課後、登校途中に通過した公園に人だかりができていた。
午前中土砂降りだった雨は嘘のようにあがっていた。雲一つない青空が広がっていたが、公園内には水たまりがたくさんあった。
僕は水たまりを避けながら群集に近づいていった。
トイレの周りに黄色いテープが貼られていてそれの外側に沿って人が立っていた。テープ内に、紺の帽子を被り、ポケットがたくさんついた紺の作業服を着た大人が数人いた。

「トイレの中で血を流していたんですって」

「どんな人なの?」

「中年の男の人らしいわよ」

「物騒ねえ、何が起こるか分からないわねぇ~」