幼少期は嗅覚を調節しずらかった。夏場は、睡眠中に排水口の悪臭で起こされて泣いたものだ。
小学1年生の頃、校庭の隅に設置された焼却炉から出る煙の臭いばかりを感じ取り、それを払いのけることができなかった。
仕方なく、オレンジ色をした香りつき消しゴムを千切って鼻に詰めたら、奥に入り過ぎてとれなくなった。
泣いた僕は、担任に手を引かれて保健室に行った。保健の先生が指示するままに、片方の鼻の穴を指で抑えてフンッと鼻息を強く吐いたら、勢いよく鼻汁にまみれた消しゴムが飛び出した。

授業中にトイレに行きたくなってトイレを意識したら、誰かが流し忘れた汚物の臭いをもろに吸いこんでしまい、気分が悪くなったこともある。
犬が時々「ク~ン」と悲しく鳴くのは、色々嗅いでいて嫌な臭いを吸いこんでしまった時だと思う。
僕は異臭に耐えながら、ニオイを嗅ぎ分ける特訓を繰り返した。
高学年になったら、職員室で現在何人の先生がコーヒーを飲んでいるのかを、3階の教室から当てれるようになった。